FUJIMI HERMITAGE DIARY

photo:kisya

雪おろし

2.24

 富士山へスキーに行こうという予定をたてていたが、朝から小雨。昨日おととい

は3月4月の陽気だったが、今日は弱い低気圧がきているらしい。それほど寒くはないの

で雪にはならないと思う。雪になってくれるな、と思う。

 雨が降るのと、それが雪に変

わるのとでは大違いだ。正月から先週までの積雪は180センチ。それがどんどん融けてい

くのがうれしい。この数日のぽかぽか陽気と今日の雨であらかた屋根の雪は消えてしまっ

た。先週は、除雪でたいへんだったのだ。それが,おてんとう様というパワーは、あっと

いうまに雪を柔らかくして水にかえてくれる。雨樋からは融けた水があふれるように流れ

落ちている。

  先週はたいへんだった。車を入れる場所を作るのに大汗をかいて除雪し

た。屋根にも一メートルほど積もっていて、まさか潰れることはないとは思うけれど、そ

れでも屋根に登って雪降ろしにトライしてみた。生まれて初めての経験だ。ロープを持ち

出して、ぐりぐりという名の確保機を軒に固定して万一の備えながらの作業だった。大雪

の積もった棟に登ると、まるで雪稜の上にいる気分。いっきに雪崩てくれれば雪降ろしも

かんたんなのだが、何日もかけて積もった雪はシングルという屋根材に氷ついていて踏ん

でもけっても落ちはしない。これならロープなどいらないくらいだ。

小一時間かけて、

ま、こんなもんか、という位、雪国の人がみればあきれるようなあらっぽい雪降ろしをし

て、一服。富士山が春霞にけむっている。黒光りした斜面はアイスバーンなのだろう。振

り替えって見下ろせば湖を真っ白にした山中湖が望める。

なんとなくいい気分ではあった。

 

先週はそんなわけでスキーどころではなかったのである。朝飯を食べながら、そう

いえば天気予報というものあったな、とインターネットにつなぐ。今日は一日こんな

天気らしい。天気の悪い富士山なんてごめんだ、午後雨があがったら近所でクロカンス

キーでも、とクロに話しかける。

ネットの気象情報のページに小さなコラムがあって、

1972年の3月20日の富士山の大量遭難の記事がのっているのが目につく。

 一日で30人ほ

どが強風と寒さ、雪崩などで死んだという。そいえばそんなこともあったかな、と思う

が、はっきりはしない。今日とちがって、その日は日本海を強力な低気圧が二つ通りすぎ

たのだという。そのあと南のあたたかい風が日本列島を吹き荒れたのだ。いわゆる春一番

とか二番という春の強い南風である。

 春一番といえばぽかぽかした陽気を想像するが、

富士山では違っていた。風速30メートル以上の風が吹いたらしい。風速1メートルで体感

気温が1度下がるというから、仮に標高2000メートル地点で0度くらいだとしても、体感

ではマイナス30度以上であったにちがいない。多くの人は風の強い中を登っていき、雨に

あたり、動けなくなったという。雨具も貧弱だったのかもしれない。麓まで降りられずビ

バークした組もいて、その人達はほとんどが生還できなかったらしい。雪崩遭難もあった

というが詳細はわからない。この3月20日の雪崩にはとても興味がある。いずれなんとか

して調べてみたいものだ。

 午後になって小雨は止まなかったが、クロを連れて近所の林

や丘に散歩にいく。ウロコつきのテレマークスキーをはいているので快適だったが、クロ

はまさにツボ足なので腐れ雪にもぐってたいへんそう。老犬ゆえ後ろ足が不具合で気の毒

だ。去年まで元気に雪山をいっしょに駆け回ったものだが、犬の人生にも無常を感じてし

まう。

 小屋に戻って濡れものを干していると電話が。なべちゃんだった。

 谷川岳にス

キーに行く予定をかえて明日富士山にスキーにいきたいという。友達を連れて今夜やって

くるという話しになった。そうか明日は日曜日か。天気も回復するから富士山スキーも悪

くはないだとう。とはいえ低気圧のあとだから明日は冷えるだろう。御殿場口がいまごろ

楽しめるルートだ。もちろん頂上を目指すわけではない。条件がよくて宝永山まで。上部

はまだ真冬、アイスバーンの世界だ。

 今夜は、一杯やりながら、朝方仕入れたばかりの

1972年の富士山大量遭難の教訓をレクチャーするか…。

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